第571話:腹を壊したんじゃないのか

古谷浩も前に出て言った。「武道家のくせに、体力がなさすぎるんじゃないか?一発蹴られただけで十日も入院するなんて?」

平野青も続けて口を開いた。「もしかして、私の妹弟子に当たり屋でもするつもり?」

その場にいた人々は全員、当日の出来事を目撃していた。馬場絵里菜は相手を一度蹴っただけだった。これは事実だ。

菅野飛鳥は、その言葉を聞いて恥ずかしさと怒りで顔を赤らめた。まるで人前で公開処刑されているかのようだった。

しかし、確かにあの一蹴りで入院したのも事実なのだ。

山田燕は困惑していた。当時詳しい経緯を確認していなかったからだ。ただ菅野飛鳥が龍栄の者に殴られて入院したと聞いただけで、これは武道場に乗り込むいい機会だと思い、意気揚々とやってきたのだ。

そして今は……

山田燕は菅野飛鳥の方を向いた。菅野飛鳥は振華の最優秀な弟子とは言えないが、その才能と武術は決して弱くはなく、百人近い生徒の中でもかなりの実力者だった。