その時、港区の馬場ビルの最上階にある社長室では。
馬場長生は監査局のプロジェクト監査担当の田中局長との電話を切ったところだった。
東海不動産が60万平方メートルの土地を奪い取り、馬場長生は相手が何に使うのか気になっていた。以前、田中局長に一言伝えておいたところ、今日になって東海不動産もその土地を遊園地開発プロジェクトに使用する予定だという情報を得た。
馬場家の情報が漏れて相手に先を越されたのか、それとも両社が偶然同じことを考えていたのか?
今の馬場長生にはそんなことを考える時間はもうなかった。
彼は田中局長に相手のプロジェクト企画書を却下するよう頼んではいなかった。馬場長生は利益第一の実業家ではあるが、そこまで下劣なことはしない。
しかし田中局長は、馬場グループに恩を売ろうと、独断で東海不動産の開発計画を却下してしまった。