その時、港区の馬場ビルの最上階にある社長室では。
馬場長生は監査局のプロジェクト監査担当の田中局長との電話を切ったところだった。
東海不動産が60万平方メートルの土地を奪い取り、馬場長生は相手が何に使うのか気になっていた。以前、田中局長に一言伝えておいたところ、今日になって東海不動産もその土地を遊園地開発プロジェクトに使用する予定だという情報を得た。
馬場家の情報が漏れて相手に先を越されたのか、それとも両社が偶然同じことを考えていたのか?
今の馬場長生にはそんなことを考える時間はもうなかった。
彼は田中局長に相手のプロジェクト企画書を却下するよう頼んではいなかった。馬場長生は利益第一の実業家ではあるが、そこまで下劣なことはしない。
しかし田中局長は、馬場グループに恩を売ろうと、独断で東海不動産の開発計画を却下してしまった。
設立間もない小さな東海不動産を敵に回しても、大手企業の馬場家の顔を立てることができれば、田中局長は正しい判断をしたと自負していた。
将来何か頼み事があれば、馬場グループもきっとこの恩に報いてくれるだろう。
馬場長生は田中局長のこのような行為に賛同はしていなかったし、感謝や喜びを感じることもなかった。
しかし現実には、田中局長のこの行動によって、馬場家は時間を稼ぐことができた。
馬場長生はすぐに行動を起こし、会社のプロジェクト開発チームを緊急会議に召集した。
遊園地プロジェクトの構想が出た時点で、すでにプロジェクトチームは結成されており、今や馬場グループの最上階会議室には、このプロジェクトの中核メンバー40~50人が席を埋めていた。
馬場長生が社長として直接会議を主催し、全員が背筋を伸ばして座っていた。この会議が社長の目にどれほど重要に映っているかが分かる。
余計な挨拶もなく、馬場長生は着席するなり単刀直入に話し始めた。「私は今、情報を得たばかりだが、東京の別の不動産会社も遊園地プロジェクトの開発意向を持っており、しかも相手は我々より動きが早く、南郊外のあの素晴らしい土地を手に入れただけでなく、プロジェクト企画書まですでに提出している。」
出席者たちはこの言葉を聞いて、思わず表情を硬くした。
このような大胆な市場先見性のあるプロジェクトを、馬場家以外の会社が思いつくとは?