第583話:鉄板を蹴ってしまったのか!

「麻生次長、私……参りました……」

部屋に入るなり、田中仲は腰を低く曲げ、恭しい態度で、目の前の麻生直人に対して目を上げることもできなかった。先ほどの電話での麻生直人の口調から、明らかに危機感を感じていたからだ。

ソファに座る気品のある銀髪の男性に横目で気づき、田中仲は目は鼻を見、鼻は心を見るように、突然呼び出された理由は、きっとこの人物と関係があるのだろうと心の中で推測した。

麻生直人は冷たい目で田中仲を三秒ほど見つめ、口を開くと、嘲笑うような口調で言った。「田中局長は大きな権限を持っているようですが、最近はずいぶんと良いことをしているようですね!」

田中仲は馬鹿ではない。麻生直人の言葉に含まれる皮肉が聞き取れないはずがなかった。

その場で体が縮こまり、エアコンの効いているオフィスで、背中は一瞬で冷や汗でびっしょりになった。