田中仲の体は震え、麻生直人の詰問に三魂七魄の半分が飛び散ってしまった。
心臓が緊張で鈍く痛み、それでも頭の中で必死に状況を挽回しようと考えていた。
馬場長生は彼にそうするように言ったわけではなく、これは全て彼の独断で引き起こした結果だった。この時点で馬場家を巻き込もうとも考えた。相手は東京の有名企業グループであり、大物だ。麻生次長が馬場家という名前を聞けば、相手の面子を考慮して自分を見逃してくれるかもしれない。
しかし、もしそれが効果がなければ、自分は泥沼に陥るだけでなく、同時に馬場家の怒りも買うことになる。それでは八方ふさがりになってしまうではないか。
しばらく心の中で葛藤した末、田中仲は馬場家を除外し、自分で責任を取ることを選んだ。「麻生次長、これは私の不注意でした。最初の段階で正しい判断ができなかったのは、私自身の問題です。反省し、深く考え直します。」
この言葉を聞いて、白川昼はようやく田中仲を見上げた。
この状況でもなお頑なに口を閉ざしているということは、彼を操っている背後の人物は、おそらく東京の商界で重要な地位にいるのだろう。
この点は、まるで馬場グループと偶然一致しているようだった。
田中仲は全く予想していなかったが、彼が言わなくても、白川昼は既に様々な兆候から事の真相を見抜いていた。
「麻生、私はこの後用事があるので、この件を早めに解決してもらえないだろうか」白川昼は淡々と口を開いた。
彼の目的は既に達成されており、この田中仲が麻生直人からどんな処分を受けるかについては、実際のところ関心がなかった。
麻生直人は白川昼の前で、この面倒を起こした田中仲をしっかり叱りつけようと思っていたが、白川昼の一言を聞くと、すぐに話を切り替えた。「公印は持ってきましたか?」
田中仲は何度も頷いた。「はい、持ってきました。」
麻生直人が目配せすると、田中仲はもはや余計な口出しをする勇気もなく、躊躇なく企画書を取り上げ、最後のページに直接承認印を押した。
白川昼は押印された企画書を受け取るとすぐに立ち上がり、麻生直人に微笑みかけた。「ご苦労様でした。」
「白川さん、そんなに気を遣わないでください。うちの者があなたの会社に迷惑をかけてしまって。」麻生直人も立ち上がり、穏やかな口調で謝罪した。