このカードは絵里菜が自分のために用意したもので、当時は水雲亭の会員カードで、利用制限がないとだけ言われていた。
そのため、今日時間ができた細田登美子は、細田芝子と伊藤春を誘って、クラブでエステを受けに来て、しっかりと顧客として過ごすことにした。
フロントのチーフが細田登美子から差し出されたカードを見た時、一瞬表情が凍り、そして驚きの色が浮かんだ。
これは明らかに普通の水雲亭の会員カードではなく、水雲亭の最高会員資格を象徴するセンチュリオンカードだった。毎年わずか3枚しか発行されず、お金があれば手に入るというものではなく、前年の水雲亭での利用額上位3名のゴールドカード会員が、自動的にその年のセンチュリオンカード会員となるのだ。
そのチーフは少し驚いた様子で細田登美子を再度見つめた。彼女はフロントのチーフとして3、4年勤めているが、このセンチュリオンカードを持つVIPについては、まったく記憶がなかった。
細田登美子はとても美しく、もし会ったことがあれば、絶対に忘れるはずがない。まして彼女はセンチュリオンカードを持っているのだ。
相手が躊躇しているように見えたので、細田登美子は優しい口調で尋ねた。「何か問題でもありますか?」
チーフはそれを聞いて慌てて職業的な笑顔を取り戻し、軽く首を振った。「いいえ、少々お待ちください。」
そう言うと、会員カードを持ってコンピューターで登録認証を行おうとした。カードを読み取ると、システム上の残高欄には「無制限!」と表示された。
チーフは呆然とした。このようなカードは見たことがなかった。通常、センチュリオンカード会員は百万円以上の金額をカードに入金するが、無制限という表示はあり得なかった。
これでは、いくら使っても料金がかからないということではないか?
他の二人のフロントスタッフも集まってきて、コンピューター画面に表示された文字を見て、互いに驚きの表情を交わした。
「これは一体どんなカードなの?無制限利用のカードなんて見たことないわ」と一人が小声でつぶやいた。
「偽物ではないはずよ。偽物なら情報が読み取れないはず」もう一人も声を潜めて応じた。
その時、チーフは二人に向かって言った。「お二人はVIPのお客様とお話をしていてください。私はマネージャーに確認してきます。大切なお客様に失礼のないようにしないと」