第610話:この者は、強すぎる!

ジョージは素早く動き、一歩前に踏み出して、攻撃を受けたヘレナを受け止めようとした。

しかし、その一撃の力を甘く見ていた。ヘレナの体が彼の胸に当たり、ジョージの逞しい体も一緒に吹き飛ばされてしまった。

「ドン」という音とともに、二人は畑の中に落ち、砂埃が立ち上がった。

ヘレナは両腕が痺れ、手の感覚が失われ、胸も鈍く痛んだ。幸い、下にジョージがクッションになってくれたおかげで、自分は怪我を免れた。

衝撃が和らいだおかげで、ヘレナとジョージは大きな怪我を免れた。二人は埃まみれになりながら狼狽えて立ち上がり、同時に目を向けた。

馬場絵里菜の前に、その黒い鋭い影が立ち、全身に殺気を纏い、暗夜から現れた命を奪う修羅のようだった。

月島涼以外の誰でもなかった。

馬場絵里菜は顔を輝かせ、思わず尋ねた。「どうやってここを見つけたの?」

彼女は相手の車を追って市街地を出て、ここまで来た。馬場絵里菜の記憶が正しければ、その時月島涼は彼女のためにアイスクリームを買いに行ったはずだった。どうしてこんな重要な時に彼女の命を救いに来られたのだろう?

月島涼は無表情で右手を上げた。彼の手には他でもない、携帯電話が握られていた。

受話器から白川昼の切迫した声が聞こえてきた。「社長!社長!大丈夫ですか?」

馬場絵里菜は微笑み、心の中で納得した!

白川昼の予知者としての能力は、捨仙門の者を感知できる。月島涼はきっと真っ先に白川昼に連絡を取り、白川昼の感知に基づいて指示を受け、彼を導いて自分を見つけ出したのだ。

つまり、白川昼は自分で言うほど役立たずではなく、この予知者の能力は、重要な時に命を救うことができるのだ!

ヘレナとジョージはカールと雷の側に歩み寄った。たった今の一撃だけでも、ヘレナは明らかに月島涼の強大な実力に警戒心を抱いていた。

「この少年は強い!」ヘレナは小声で言った。

先ほど、誰も彼の姿すら見えなかったのに、その一撃はすでに的確に決まっていた。もし相手から発せられる強烈な気圧をヘレナが察知していなければ、その一蹴りは直接彼女の胸に命中していただろう。

あの怪力なら、一蹴りで彼女の命を奪えたかもしれない。

最初は一人の少女で、今度は一人の少年。しかも二人とも恐ろしいほどの実力を持ち、人を戦慄させる異様さを漂わせている。

まるで……