第611話:私が奴らを殺す!

カールたちは突然現れた二人を見て、心が沈んだ。今回の任務は簡単には完遂できないことを悟った。

彼らにとって、馬場絵里菜も、月島涼も、宮原重樹も、山本陽介も、全く見知らぬ顔だった。しかし、先ほど月島涼の強さを目の当たりにしたばかりで、宮原重樹と山本陽介という二人の成人男性も侮れない存在だと分かっていた。

カールは眉をひそめ、心の中で思案を巡らせた。まさか...雷を出動させなければならないのか?

周囲を見渡すと、ここは確かに公道沿いだが、人里離れた場所で、あたりは荒涼としている。雷が動いても、問題はないはずだ。

宮原重樹は馬場絵里菜の傍らに立ち、苦しそうな様子と口元の血を見て、陰鬱な双眸から鋭い殺気を放ち、冷たい声で言い放った。「こいつらを殺す!」

言い終わるや否や、すぐにも動き出そうとした!

馬場絵里菜は驚いて、普段は落ち着いて寡黙な宮原重樹がこんなに激昂する一面があるとは思わなかった。我に返って急いで彼を制止した。

宮原重樹は手に真気を集中させたまま、不思議そうに馬場絵里菜を振り返った。相手をどう始末したいのかと尋ねているようだった。

十二衛の目には、門主を傷つけた者は、遠くとも必ず討つべき存在なのだ!

その目に宿る殺気は、先ほどの月島涼の身に纏っていた気配と同じだった。馬場絵里菜にはわかっていた。彼女が頷くだけで、宮原重樹はその場で相手を粉々にするだろう。

しかし、馬場絵里菜はそうしなかった。代わりに宮原重樹の手首を宥めるように握り、弱々しい声で言った。「まだ動かないで」

馬場絵里菜が怖気づいたわけではない。雪絵がまだ相手の手中にいるからだ。命がけで追いかけてきたのも、相手と死闘を繰り広げるためではなく、ただ一つの目的、雪絵を救出することだけだった。

実は最初、馬場絵里菜はそれほど深く考えていなかった。雪絵が誘拐されるのを見て、最初の反応は追いかけることだった。それは本能的なもので、理由すら考えていなかった。

普通の誘拐事件だと思っていた。家族の私怨に巻き込まれたか、あるいは行き詰まった犯罪者たちが巨額の身代金を要求しようとしているのかもしれないと。

しかし、相手が四人の外国人だとは思いもよらなかった。