砂埃が徐々に晴れていき、突然現れた男の輪郭がはっきりと見えてきた。その姿が人々の前にはっきりと現れるにつれ、馬場絵里菜は思わず息を飲んだ。
井上裕人!
なぜ彼が?
井上裕人の表情は冷たく、その雰囲気は以前とは全く異なっていた。馬場絵里菜の脳裏に焼き付いているあの顔でなければ、この殺気を纏った男が本当に井上裕人なのかと疑ってしまうほどだった。
頭の中で閃くものがあり、馬場絵里菜は突然気づいた。
裕人!
雪絵!
もしかして雪絵は井上姓で、井上裕人の妹なのか?
なんという因縁だろう。必死になって救った人が、井上裕人の妹だったなんて!
知っていたら見捨てたというわけではないが、なぜ何もかもがこの男と関係しているのだろう?
そして馬場絵里菜はさらに気づいた。井上裕人の後ろには、とても幼い少女が付いていた。