天雷が落ちた場所に残された大きな穴を見れば、その威力が分かるだろう。もし不運にも直撃を受けたら、生き残る余地など全くない。
そして、これはおそらく彼の全ての力ではないだろう。
しかし馬場絵里菜も同時に気づいた。雷の能力は強大だが、彼は一度に一つの天雷しか制御できないようだ。そうでなければ、複数の天雷を同時に操って攻撃することも可能なはずで、月島の速さをもってしても逃れることはできないはずだった。
馬場絵里菜が最も気になったのは、雷の攻撃は一見無秩序に見えるが、実際には天雷が落ちる場所は全て月島の位置を捕捉したものだということだ。なぜなら、馬場絵里菜自身も瞳術で月島の位置を見ることができたからだ。
雷の牽制があるため、月島は他の攻撃を仕掛ける余裕がなく、天雷を避けることで精一杯だった。
この光景は、まるでSF映画のように不気味で、十二の最高レベルの心法を持つ馬場絵里菜でさえ、一時的に受け入れがたいものだった。
心が自然と引き締まる。馬場絵里菜は月島の実力を信じているものの、雷がどれだけの切り札を持っているのか見当もつかず、月島が一瞬のミスで天雷に打たれてしまうのではないかと心配だった。
そうなれば、宮原重樹でさえ、もはや手の施しようがないだろう。
そしてその時、山本陽介が突然前に出た。
彼は両手を大きく広げ、左手の掌の前方にゆっくりと青い光が渦を巻きながら現れた。山本陽介の目にも青い光が宿り、「潮生術、速さの源!」と叫んだ。
影月の力を使う月島は、すぐに体が軽くなったのを感じた。足下の速度は約五十パーセント上昇し、より素早く動けるようになった。
しかしそれだけではなかった。山本陽介の右手の掌の前方には続いて赤い光が渦を巻きながら現れ、目の中の青い光が消え、今度は赤い光が宿った。「潮生術、力の源!」と大声で叫んだ。
次の瞬間、月島は体の周りを熱い流れが包み込むのを感じ、全身に力が満ちあふれた。
彼は以前から白川昼によってクース国に連れて来られ、捨仙門の中で、白川昼の次に親しい人物は間違いなく白川昼の側近の山本陽介だった。しかし、これほど長い年月の間、山本陽介の本当の能力が何なのか知らなかった。