「雪絵!」
井上裕人の心臓が激しく締め付けられ、井上雪絵を抱きしめながら、背中を優しく撫でて慰めた。「大丈夫だよ、お兄ちゃんがいるから、怖くないよ!」
井上雪絵の震える体は、井上裕人の体温を感じると徐々に落ち着きを取り戻し、瞳の中の表情が次第に焦点を合わせ、意識も少しずつ戻ってきた。
「お兄ちゃん……」
か細い呼びかけに、井上裕人は優しく雪絵の体を離し、心配そうに彼女を見つめた。「お兄ちゃんがいるよ、もう大丈夫だ。」
井上裕人の目を直視した瞬間、井上雪絵の目から涙が溢れ出し、心の中の恐怖が一気に解放され、思い切り泣き出した。
井上裕人は再び妹を優しく抱きしめ、自分の逞しい胸と広い腕で十分な安心感を与えた。
しかし、井上雪絵は泣きながら、突然何かを思い出したかのように慌てた様子で言った。「お兄ちゃん、絵里菜姉さんは、絵里菜姉さんはどうなったの……」