帰り道で、井上雪絵は後部座席に座り、絵里菜を家に招待する時、どうやって輝も一緒に来てもらえるか考えていた。
「雪絵……」
隣にいた井上裕人が突然声をかけ、井上雪絵はすぐに我に返って彼の方を向いた。「お兄ちゃん!」
「絵里菜をいつ家に招待するつもり?」井上裕人は表情を変えずに、何気なく尋ねるように聞いた。
井上雪絵は少し考えてから答えた。「この数日中かな。もうすぐ学校が始まるし」
「その時は兄さんに教えてくれよ」井上裕人がまた言った。
井上雪絵はその言葉を聞いて、疑わしげな表情を浮かべ、井上裕人をしばらく見つめた後、意味深な口調で言った。「お兄ちゃん、もしかして……絵里菜のことが好きなの?」
井上雪絵は年齢はまだ若いものの、何も分からない年頃は過ぎていた。特に今夜の井上裕人の絵里菜に対する態度は明らかに普段と違っていた。自分も片思い中だったので、このような状況には敏感だった。
「ふん……」井上裕人は冗談でも聞いたかのように軽く笑い、首を振った。「僕が彼女を好きだって?」
「違うの?今夜はほとんどの時間を絵里菜と過ごして、全部の注意を彼女に向けていたじゃない」井上雪絵は兄が強情を張っているだけだと思った。明らかに相手の注目を引きたいのに、認めようとしない。
そう考えながら、井上雪絵は口を尖らせて言った。「絵里菜のことが好きじゃないなら、どうして彼女が家に来る時に知らせてほしいの?」
「そんなにいろいろ聞かなくていい。僕は君のお兄さんなんだから、当然僕の味方をしてくれないと」井上裕人は彼女を見ながら言った。
井上雪絵は気にせず目を転がした。彼女だって輝のことが好きだけど、絵里菜の機嫌を損ねるようなことはできない。
ただ……
井上雪絵は窓の外を見ている兄をこっそり見た。もしお兄ちゃんが本当に絵里菜を射止められたら、それって親戚同士になれるってことじゃない?
とにかく自分は絶対に輝と結婚するんだから!
深夜の東京はすでに静けさに包まれ、街灯がきらめく中、時折車が通り過ぎるだけだった。井上裕人の整った眉が緩み、今夜起きた出来事を思い出すと、なぜか気分が晴れやかになった。
君が僕のことを好きじゃないと言うなら、僕が君を好きにさせる方法を考えよう。
……
翌日、馬場絵里菜は寝たばかりのような気がしたところで、目覚まし時計に起こされた。