第672話:私を選んだ報いよ!

その時、全員の注目は井上裕人と馬場絵里菜に集中していたため、馬場長生の異常な様子は他の人には気付かれなかった。ただ、彼のことしか目に入らない橋本好美だけが気付いていた。

「長生、どうしたの?具合でも悪いの?」橋本好美は心配そうな表情を浮かべた。彼女が腕を組んでいる馬場長生が急に硬くなったのを明らかに感じたからだ。

彼の顔色も良くなく、かすかに震えているようにさえ見えた。

幸い、橋本好美の優しい気遣いの一言で、馬場長生は我に返った。すぐに感情を整え、微笑んで答えた。「大丈夫だよ。でも、急に緊張してきちゃったんだ。」

橋本好美はそれを聞いて、思わず口元を緩めて笑った。「私は緊張してないのに、あなたが緊張しちゃうの?ゲームだけよ。勝ち負けなんて関係ない。みんなが楽しめればそれでいいじゃない。」

馬場長生は優しい眼差しで橋本好美の手を軽く叩き、笑顔で頷いた。

馬場絵里菜の横顔を見つめながら、心の中は荒れ狂う波のようだったが、馬場長生は必死にその感情を抑え込み、表に出さないようにした。

この時、鈴木秋は三番目、つまり最後のゲーム参加者を引いた。「Mグループ傘下の東海不動産、白川社長!」

参加者たちは意外そうな様子を見せた。この東海不動産は、馬場グループとは何かと縁があるようだった。

不動産業界の人間でなくても、二つのグループの事情について多かれ少なかれ耳にしていたため、皆この東海不動産が一体どんな会社なのか興味津々だった。

白川昼がステージに上がり、パートナーは当然、一緒に来ていた新田愛美だった。

白川昼を見たことがない人々も驚いた。この東海不動産の社長はとても若く、25歳前後に見えた。

そして彼の隣の女性、新田愛美は、パーティーの始まりから既に会場の注目の的となっていた。

「皆さんもご存知かと思いますが、本日の白川社長のパートナーは、日本で最も有名な女優の新田愛美さんです。まさか私たちのパーティーに新田さんが来てくださるとは思いもよりませんでした。皆様、拍手でお迎えください。」鈴木秋は、井上裕人に対する時よりもリラックスした様子で話した。

会場の参加者たちは次々と拍手を送った。

新田愛美は馬場絵里菜の横を通り過ぎる際、茶目っ気たっぷりに目配せをした。馬場絵里菜もそれに微笑みで応えた。