第661話:いたずらしたらキスするよ!

そして彼の腕の中の馬場絵里菜は、まるで完全に抵抗を諦めた干物のように、ただ彼に抱かれたまま人目にさらされ、無表情で生きる気力を失ったような顔をしていた。

井上裕人に出会うと、もう何も抵抗する気にもならなかった。神様は永遠に彼の味方をしているようだから。

彼女はただの神様に見放された妖精に過ぎなかった。

このような大きな騒ぎは、当然のことながら皆の注目を集めた。古谷始はさっきまで突然姿を消した馬場絵里菜を探していたが、この光景を目にして、その場で呆然と立ち尽くした。

絵里菜が部長に抱かれている?

他の人と同様に、古谷始も驚きの表情を浮かべていた。前に出るべきか迷っているところ、井上裕人が曲がり角を曲がって、中央から右側のソファエリアへと向かうのが見えた。

優しく馬場絵里菜をソファに降ろすと、井上裕人は彼女を見下ろして言った。「ちょっと待っていて。」