他の先に着いた人たちはすでに校門の前で待っていた。馬場絵里菜たちの四人乗りのタクシーが最後に到着した車だった。
全員が揃ったところで、一行は一緒に一中の門に入った。馬場絵里菜と月島涼、そして高橋桃は人群れの最後尾にいた。
「退屈だと思うなら、先に帰ってもいいよ。ずっとついてくる必要はないから」馬場絵里菜は月島涼がこういう場が好きではないかもしれないと思い、彼に声をかけた。
月島涼は無表情で返した。「大丈夫だ」
馬場絵里菜は唇を引き締め、それ以上何も言わなかった。
一中のバスケットボールチームはすでにコートで待っていて、両チームが会うとすぐに熱心に挨拶を交わした。明らかに皆旧知の仲だった。
試合を見に来た人たちは自然とバスケットコート周辺の石段に座り、コート内の人々はすでにウォーミングアップを始めていた。
……
一方、夏目沙耶香は放課後すぐに運転手にローズエンターテインメントまで送らせた。豊田拓海はすでに先に到着していた。
会議室で、『交織の夜』のプロジェクト責任者が直接厚い書類のファイルを夏目沙耶香に手渡した。「沙耶香、これは台本だから、家に帰ったらよく読み込んでおいてね」
夏目沙耶香は手に取りながらパラパラとめくり、質問した。「キャスティングは終わったの?具体的な撮影開始日は決まった?」
「まだいくつか重要な役のオーディションが終わっていないけど、撮影開始日は10月20日に決まったわ。つまり、あと約1ヶ月半ね。この期間を利用して事前に役を感じ取っておいて。葉山琴海という役は演じるのが簡単ではないし、監督もオスカーを取った人だから、役作りに対する要求も高いのよ」
夏目沙耶香はそれを聞いて理解したように頷いた。「わかった、頑張るよ」
「まだ帰らないで、この後橋本社長がいらっしゃるから」その人はこう言い残して、先に会議室を出て行った。
しばらくして、橋本通がドアを開けて入ってきた。夏目沙耶香と豊田拓海を見ると笑顔を見せた。「ちょっとお知らせがあるんだ」
橋本通が座ってから続けた。「前に沙耶香が撮ったあの2つのCM、どちらも今月全国放送されることになったよ」
「そんなに早く?」夏目沙耶香は少し驚きつつも嬉しそうだった。「先月撮り終わったばかりじゃない?」