第795章:おばさん、ちょっとプレゼントを買ってきました

事態はますます複雑になっているようで、馬場絵里菜はしばらく頭が混乱していた。

しかし、これはこれでいい。一日で時価総額が大幅に蒸発し、今は馬場家自身もきっと大混乱に陥っているだろう。当分の間、東海不動産に不利なことをする余裕はないはずだ。

馬場絵里菜にとっては、これは喜ばしいことだった。馬場家自身も、ある日突然会社がこのような災難に直面するとは予想外だっただろう。

正直なところ、馬場絵里菜は心の底から少し他人の不幸を喜ぶ気持ちがあった。

……

夜、井上裕人は再びパラダイスクラブに現れた。

ホールでは、細田登美子が広報マネージャーの霞と話をしていた。

「登美子さん、もうすぐ十月一日の連休ですから、クラブは間違いなく忙しくなります。去年のイベントは好評でしたから、今年も新しいイベントをいくつか提案したいと思います。」

霞はパラダイスの広報部マネージャーで、簡単に言えば、パラダイスのホステス全員が彼女の管轄下にあった。彼女はかつて細田登美子の上司でもあった。

ただ、細田登美子の方が年上だったので、以前から霞は細田登美子のことを登美子さんと呼んでいた。そのため、細田登美子が総支配人になった今でも、その呼び方は変わらなかった。

細田登美子はうなずいて言った。「私もそう思っていました。後で会議で相談しましょう。何かいいアイデアがないか見てみましょう。」

二人が話している間に、井上裕人は既に4つの美しく包装された贈り物を持ってロビーに入ってきていた。

一目見て、フロント近くの細田登美子を見つけると、すぐに彼女に向かって足早に歩いていった。

「おばさん。」

細田登美子は霞との会話に夢中で、井上裕人に全く気づいていなかった。そのため、井上裕人が近くまで来て声をかけたとき、彼女はびっくりした。

驚きの表情を浮かべたまま、細田登美子が振り向くと、井上裕人だと分かり、驚いて言った。「裕人?」

言い間違えて、細田登美子はもう少しで井上さんと呼びそうになったが、頭の回転が速かったので助かった。

隣にいた霞は井上裕人を見て驚き、細田登美子が井上の下の名前で呼んだのを聞いて、さらに驚いた表情で細田登美子を見た。

登美子さん……

いつから井上さんとそんなに親しくなったの?