第797章:オーディション

土曜日、ローズエンターテインメントの『交織の夜』最後のオーディション。

通常、会社内部のオーディションは密かに行われるもので、前回までのオーディションもそうだった。

しかし今回は違った。新田愛美は馬場絵里菜に急遽招待されたものの、ローズエンターテインメントはすぐにその情報を公開した。

今朝早くから、国内の主要エンターテインメントメディアが殺到し、オーディション会場の外で早くから待機し、新田愛美の姿を待っていた。

現場では、オーディションの招待を受けた各芸能事務所が担当者を派遣し、所属タレントを連れて早めに準備に来ていた。

最後のオーディションでは、ローズエンターテインメントからは馬場依子一人だけが、女性第三役の渡辺唯役を競っていた。

馬場依子のマネージャーは佐藤優といい、ローズエンターテインメントのトップマネージャーで、浅見満も彼が担当していた。

「優さん、ちょっと緊張してます」馬場依子は不安そうに拳を握りしめ、唇も少し青白くなっていた。見たところ本当に緊張しているようで、演技ではなかった。

佐藤優はそれを聞いて思わず小声で慰めた。「リラックスして、依子。自分が緊張しないって言ってたの忘れたの?演技レッスンで培った実力を発揮すれば、役は間違いなく取れるよ」

馬場依子はそれを聞いて軽く頷いた。

実は彼女は最初緊張していなかったのだが、今日のオーディションの審査員の一人が新田愛美だと聞いて初めて緊張し始めた。

彼女にとっての憧れのアイドルに会えると思うと、そんなに緊張するのも無理はなかった。

一台のボルボがゆっくりとオーディション会場外の路肩に停車し、待機していた警備員たちはすぐに車を取り囲んだ。

記者たちはこの様子を見て、明らかに新田愛美が来たことを悟った。

「急げ、新田愛美が来たぞ!」

「タバコやめろ、カメラは?彼女が来たぞ!」

記者団は一斉に騒ぎ出し、群がるように駆け寄った。

車のドアが開き、新田愛美はサングラスをかけ、薄化粧で、淡い青緑色の長い髪を自然に流し、カジュアルなスタイルで皆の前に現れた。

「新田さん、南都エンターテインメントの記者ですが、今回なぜ『交織の夜』のオーディション会場に来られたのですか?」