054:満杯の水は音を立てず、半分の水は音を立てる

城井沙織は謙虚そうに見えるが、実は内心とても自信に満ちていた。

彼女はクラスでいつも10番以内の成績を収めており、今学期はまだテストはないものの、とても頑張っていて、塾にも欠かさず通っている。講師からも才能があると言われ、今回の数学コンクールできっと注目を集めるだろう。

中村の前で控えめにしているのは、目立ちたがりの小林綾乃との対比を際立たせるためだった。

満ちた壺は音を立てず、半分の壺は響く。

明らかだった。

小林綾乃こそが、その半分の壺なのだ。

中村は笑いながら言った。「沙織さん、謙遜しすぎよ。私たちの団地で誰もが知っているわ、あなたの成績が優秀で、クラスでもトップクラスだってことを!だから今回のコンクールで京大の推薦枠は間違いなく獲得できるわ。」

そう言って、中村は続けた。「そうなれば、あなたは私たちの団地で初めての京大推薦合格者になるのよ!」