054:満壺の水は音を立てず、半壺の水は音を立てる_3

秋山春樹は頭を下げ、地面に落ちている食堂カードに気づき、すぐに拾い上げた。「ありがとう。」

彼は小林綾乃が自分のことを好きに違いないと確信していた。

そうでなければ。

どうして自分の食堂カードが落ちたことまで分かるだろうか?

好きだから。

だから過度に気にかけている。

そう考えると、秋山春樹はやっと抑えていた心臓の鼓動が、また速くなり始めた。

「どういたしまして。」小林綾乃は淡々とした口調で答えた。

秋山春樹は彼女を見つめ、突然何かを思い出したように「小林さん、もうすぐ編入試験を受けるんだよね?」

「うん。」小林綾乃は軽く頷いた。

秋山春樹は続けて「頑張ってね。」と言った。

小林綾乃の家柄は少し劣るけれど、青葉高校に合格できれば、まあ彼の彼女として何とかなるかもしれない。