054:満壺の水は音を立てず、半壺の水は音を立てる_5

すべてのお客様が店頭の広告に気付くわけではありませんが、割引カードに印刷されていれば違います。美人亭はめったにキャンペーンを行わないので、20%割引を目当てに、新店舗の住所も確認してもらえるはずです。

「では、古い割引カードはどうするの?」と大川素濃が尋ねました。

小林綾乃は答えました。「古いものは全て無効です。」

「そう。」と言った後、大川素濃は思わず罵りました。「中村忠正は本当に厚かましいわ。5年の契約期間だったのに、違約すると言えば違約!たった10日間で、すべてのお客様に新店舗の場所を知らせることなんて無理よ!」

「もし彼も化粧品店を開いたらどうするの?」

私たちの商売を全部奪われてしまうんじゃないの?

それを聞いて、小林桂代も心配になり、小林綾乃を見ました。「綾乃、おばさんの言う通りよ。もし中村忠正も化粧品店を開いたら、私たちに影響があるんじゃないかしら?」

母娘で苦労して事業を軌道に乗せ、やっと青葉市で足場を固めたところなのに、こんなことになるなんて。

小林綾乃は落ち着いていて、その端正な顔には少しの憂いも見えませんでした。「たとえ彼らが化粧品店を開いても、私たちには影響ありません。なぜなら、この世界に美人亭は一つしかないからです。」

そして、すべての化粧品が美人亭というわけではありません。

大川素濃は笑って言いました。「綾乃の言う通りよ。彼らは私たちの真似をして化粧品店を開くことはできても、美人亭の効果は真似できないわ!」

もし適当な化粧品でシミやニキビが効果的に治るなら、美人亭がこんなに人気になることもなかったでしょう。

それを聞いて、小林桂代もほっとしました。「じゃあ、すぐに山口さんに連絡して新しい割引カードを印刷してもらいましょう。綾乃、何枚印刷するのがいいと思う?」

「今の1日の来客数から考えると、最低でも10万枚は必要です。」と小林綾乃は答えました。

「わかったわ。」小林桂代は頷きました。

その時、大川素濃は何か思いついたようで、小林綾乃を見上げました。「綾乃、10万枚の割引カードを印刷するくらいなら、インフルエンサーに新店舗の宣伝を頼んだ方がいいんじゃない?そうすれば美人亭の知名度も上がるし、より多くの人に移転することを知ってもらえるわ。」