まさか...
小林綾乃が読めるのか?
そう考えると、大川校長は喉を鳴らした。
しばらくして、大川校長は一番近くにいる馬場主任に緑の表紙の本を渡し、声を潜めて言った。「見てください」
馬場主任は手を伸ばして緑の表紙の本を受け取った。
一目見て、彼も呆然とした。
大川校長は続けて言った。「この文字が何なのか分かりますか?」
馬場主任は首を振って、「英語でもなく、韓国語でもなく、日本語にも見えません...」
とにかく不思議だった。
大川校長は複雑な表情で小林桂代の方を向いて、「小林お母さん、綾乃さんはよくこの本を読んでいますか?」
「はい」小林桂代は笑顔で答えた。
大川素濃がキッチンから洗った果物を持って出てきて、続けて言った。「校長先生、その本の文字が読めないんですか?」
認めたくはなかったが、大川校長は頷いて「読めません」と答えた。