057:どんな神様の大物、西京の徳川家_6

その瞬間、小林桂美は大川素濃の口を引き裂きたいほど腹が立った。

あんなに得意げな様子を見せやがって。

知らない人は小林綾乃がすごいと思うかもしれないけど。

実際はただのカンニング野郎だ。

心の中ではそう思っていたが、小林桂美はポケットから用意しておいたお金を取り出し、「もちろん覚えているわ、素濃さん。私はいつも言っているでしょう、勝っても負けても潔く受け入れる人間だって」

「お姉さん、太っ腹ね」大川素濃は遠慮なくお祝い袋を受け取った。

続いて中村さんと木下おばあさんもお祝い袋を出した。

大川素濃とは違って、二人は心から喜んでお祝い袋を渡していた。

小林綾乃がこんなに優秀なら、近所の人たちにも恩恵があるだろうと。

得意げな大川素濃を見て、小林桂美は目を細め、突然口を開いた。「素濃さん、もう一度賭けてみない?」

「何を賭けるの?」大川素濃は振り返って小林桂美を見た。

小林桂美は笑いながら言った。「来年は大学入試だから、綾乃と沙織の点数を比べてみない?」

「いいわよ」大川素濃は頷いた。「どういう賭け方にする?」

小林桂美は続けた。「もし綾乃が大学入試で沙織の点数を超えたら、私があなたに1万円払うわ。綾乃の点数が沙織に及ばなかったら、あなたが私に1万円払う」

大学入試会場は冗談じゃない。

カンニングなんてできやしない。

まるで妖怪を映す鏡のように、すべての人の本性が現れる。

その時になれば。

小林綾乃は必ず正体を表すはず。

そう考えると、小林桂美の気分は少し晴れた。

「いいわよ」大川素濃は続けた。「今晚ここにいる近所の皆さんに証人になってもらいましょう!」

「ええ」小林桂美は頷いた。「でも、話はそうだけど、必要な手続きはちゃんとしましょう。証文を書きましょうか?」

大川素濃はもちろん最後まで付き合うつもりだった。

小林桂美が怖がらないなら、彼女が怖がる理由なんてない。

証文を作成し、いつもの通り、二人がそれぞれ一通ずつ保管した。

――

山下家。

白川露依は山下おばあさんの荷物の整理を手伝っていた。

彼女は少し心配そうに「お母さん、私が西京まで付き添わなくていいんですか?」と尋ねた。

「大丈夫よ」山下おばあさんは首を振った。「まだそこまで年を取っていないわ」