言葉が終わると、山下おばあさんは白川露依の方を向いて、「ご苦労様、露依」と言った。
「いいえ、これは私の当然の務めです」
そのとき、山下言野が外から入ってきて、白川露依の手にある荷物を見て、「おばさん、もうすぐ鈴木おばあさんの誕生日なんですか?」と尋ねた。
毎年六月になると、山下おばあさんは西京に行くのが恒例だった。
「うん」白川露依は頷いた。
山下言野は山下おばあさんの側に寄って、「おばあちゃん、私が付き添います」
「いいのよ」山下おばあさんは続けて言った。「あなたは自分の仕事をしなさい」
「最近はそれほど忙しくないんです」山下言野は言った。
山下おばあさんは彼を睨んで、「あなたの顔を見るとイライラするって言わせたいの?」
山下言野:「...」
しばらくして、山下言野は続けて言った。「じゃあ、いつお帰りになりますか?お迎えに行きます」
山下おばあさんは手で髪を整えながら、「その時は一日前に連絡するわ」
「はい」山下言野は軽く頷いた。
白川露依はスーツケースを執事に渡し、山下おばあさんを見て、「お母さん、本当に誰も送らなくていいんですか?」
山下おばあさんは呆れた様子で、「私はまだ自分のことぐらいできるわよ」
言葉が終わると、山下おばあさんは白川露依の手からキャリーバッグを受け取り、「先に行くわ。誰も送ってこないでね」
山下おばあさんの後ろ姿を見ながら、白川露依の顔には困惑の表情が浮かんでいた。
この強情なおばあさん!
玄関から山下おばあさんの姿が完全に見えなくなった後、山下言野は立ち上がって、「おばさん、ちょっと様子を見てきます」
確かに西京では徳川家が空港まで迎えに来る手配をしていた。
しかし、こちらで誰も見送らないのは、山下言野にとって少し不安だった。
山下おばあさんはもう九十歳を超えており、さらにメラノーマのリスクも指摘されていた。薬は服用しているものの、何が起こるかわからない。
白川露依は頷いて、「気を付けてね。おばあさんに見つからないように」
「うん」
山下言野は車を運転して山下おばあさんの車を追い、空港まで付いていき、搭乗口に入るのを見届けてから、やっと空港を後にした。
駐車場に着いたところで、黒武から電話がかかってきた。
「ボス」