060:仮面を見破る山下おばあさん_2

一つの言葉に二つの意味が込められている。

彼女は物乞いの人を哀れんでいるように見えたが、実は徳川秋水のことを哀れんでいたのだ。

徳川秋水が外をさまよって何年も経つが、もしかしたら彼女も路上で物乞いをしているかもしれない。

徳川家では、彼女は秋水のことを話題にすることを避けなかった。人は心に後ろめたさがある時だけ、特定の話題を無意識に避けるものだからだ。

そして秋水は鈴木澪由の最大の弱点だった。

その言葉を聞いて、鈴木澪由の目も少し赤くなり、物乞いが去っていく方向を見つめた。

そうだ!

鈴木赤玉の言う通り、彼女の秋水もあの人と同じくらいの年齢だ。

彼を見て。

彼女は何年も行方不明になっている自分の娘を見ているような気がした。

徳川秋水が今、この物乞いのように路上をさまよい、人々の冷たい視線にさらされているかもしれないと考えると、鈴木澪由は息ができないほど胸が痛んだ。