060:仮面を見破る山下おばあさん

その言葉を聞いて、山下おばあさんは眉をひそめたまま、「野良犬が死んだのを見て泣くの?」

感情的な人を山下おばあさんは見たことがないわけではない。

しかし、鈴木赤玉ほど感情的な人は初めて見た。

野良犬は確かに可哀想だが、結局小さい頃から育てた犬ではない。自分が育てた犬が死んで大泣きするのは人情だが、何の感情的な繋がりもない状態で、鈴木赤玉がどうやって泣けたのか分からなかった。

鈴木澪由は頷いて、「そうなんです」

山下おばあさんは目を細めて、「彼女は本当に多愁善感な子ね」

そう言い終わると、山下おばあさんは続けた:「でも、偽物っぽく感じないかしら?」

山下おばあさんも犬が大好きだった。

昔は飼っていた。

ペット犬が死んだ日、彼女は一日中泣いて何も食べず、二度と犬を飼わないと誓った。

その言葉を聞いて、鈴木赤玉は一瞬固まった。

山下おばあさんは続けた:「優しさは演技できるものよ」

鈴木澪由は夫と共に徳川家を今日のような規模にまで発展させたのだから、普通の人ではないはずだ。

しかし、ここ数年は娘を探すことに忙しく、周りの人々のことを一々考える暇なんてなかった。

それに。

鈴木赤玉は常に彼女の心の中では良い姪っ子だった。

一度鈴木赤玉に優しさと善良さというフィルターをかけてしまうと、現象の本質を見抜くことができなくなってしまう。

しかし山下おばあさんは違う。

彼女は鈴木赤玉に対して何のフィルターもかけていないからこそ、一目で問題点を見抜くことができた。

話がここまで来たので、山下おばあさんは鈴木澪由を見て、続けて言った:「澪由さん、あなたの姪っ子は単純な人間じゃないと思うわ。もし私たちの生活が宮廷ドラマだとしたら、彼女は妃殿下の役回りよ」

妃殿下は宮廷の陰謀を得意とする。

鈴木赤玉もまた、心理戦を演じているのだ。

以前は山下おばあさんは鈴木澪由のことをあまり気にかけておらず、付き合いもなかったので、どんな人なのか分からなかった。

しかしこの数日の付き合いを通じて。

山下おばあさんは鈴木赤玉の言動のすべてに違和感を覚えるようになった。

徳川秋水が失踪した日、彼女は学校にいたとはいえ。

それだけでは鈴木赤玉がこの件に無関係だと証明することはできない。