顔には薄いベールがかかったように見え、神秘的な雰囲気を醸し出していた。
来客を見て、鈴木赤玉は即座に立ち上がり、興奮した様子で「吉田おばさん、やっと来てくださいました」と言った。
小口名医の本名は小口貞那だった。
彼女は十年前、娘を探す途中で鈴木澪由と知り合った。
その時、鈴木澪由は珍しい感染症に罹っていた。
四十度の高熱を出していた。
死にかけていた。
もし小口名医が時機を得て救助していなければ、とうに黄泉の客となっていただろう。
そのため。
彼女は小口貞那を深く信頼していた。
それを聞いて、小口貞那は頷き、「徳川おじいさんの状態は絢から聞いています。大した問題ではないので、そんなに心配する必要はありませんよ」と続けた。
言い終わると、小口貞那はベッドの前に歩み寄り、床に跪いている鈴木澪由の手を取って、「床が冷たいわ、早く立って!」
鈴木澪由は小口貞那を見上げ、彼女の手をしっかりと掴んで、「貞那、お願いです」
「安心して、私にできる限りのことはします」
言い終わると、小口貞那は木箱を脇に置き、徳川勝の脈を取り始めた。
部屋にいる全員の視線が小口貞那に集中した。
息を潜めて見守っていた。
しばらくして、小口貞那は徳川勝の手首を離し、医療箱から青い陶器の瓶を取り出し、中から黒い丸薬を一粒取り出して彼に飲ませた。
それを見て、鈴木赤玉はすぐに尋ねた。「吉田おばさん、叔父さんの体調はどうですか?」
小口貞那は笑いながら言った。「叔父さんは元々基礎疾患があって、この数日間心配し過ぎたために気を失ったのよ。今、清心丸を一粒飲ませたから、予想外のことがなければすぐに目を覚ますはずよ」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、徳川勝は目を開けた。
まさに奇跡だった!
夫が目を覚ましたのを見て、鈴木澪由はすぐに飛びついて彼の手を掴み、「お爺さん、大丈夫?さっきはほんとに心配したわ!」
「大丈夫だよ」徳川勝は笑いながら彼女の頭を撫でて、「若い頃と変わらないね、相変わらず泣き虫だ」
彼女はこんなに泣き虫なのに。
もし自分がいなくなったら...
彼女一人でこの世をどう生きていけるだろうか?
そう考えると、徳川勝の目が暗くなった。