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南通り。
今日は美人亭が店を移転する最後の日だった。
大川素濃と小林桂代は店の入り口に立って、列に並んでいるお客様に割引券を配っていた。「申し訳ございません。本日の商品は全て完売いたしました。明日は西南の265番と266番に移転いたしますので、この割引券をお持ちいただければ、2割引でお買い求めいただけます!」
今まではタピオカミルクティーやスーパーの割引卵だけが品切れになっていた。
スキンケア製品が品切れになるのは初めてのことだった。
「店長さん、新店舗では在庫を増やしてくれるんですか?そうでないと、並んでも意味がないですよ!」
「そうそう、買えないのに、この割引券何の意味があるの?」
この問題について、小林綾乃はすでに考えており、対策も用意していた。
大川素濃は笑顔で皆に説明した。「ご安心ください。オーナーが言うには、新店舗のオープン初日は、割引券をお持ちのお客様を優先的に販売させていただくそうです。」
生産量の問題は心配する必要がなかった。
大手工場を探す前に、小林綾乃はすでに500平方メートル以上の小規模工場を確保していた。スキンケア製品はほとんど自動化生産で、原料さえ十分あれば、機械を稼働させれば途切れることなく生産できる。
そのため、明日のオープンに向けての商品数はすでに準備が整っていた。
「それならよかった!」
割引券を配り終えた大川素濃は暑さで汗だくになっていた。彼女は小林桂代の方を振り向いて、「お姉さん、今日は城井さんと何箱配りましたか?」
小林桂代は少し考えて、「たぶん5箱くらいかな。」
1箱100枚で、5箱なら500枚になる。
大川素濃は笑顔で言った。「じゃあ、明日のオープンは夜まで忙しくなりそうですね!」
確かに疲れる。
でもこの疲れは幸せな疲れだった。
お金が稼げるなら、誰が嫌がるだろうか?
中村忠正と古川月が店に入ってきた時、ちょうど大川素濃の笑い声が聞こえてきた。
夜まで忙しい?
夢見てるんじゃないの!
本当に移転したら、こんな良い商売ができると思ってるの?
「大川さん、木下さん、荷物の片付けは終わりましたか?」古川月は腕を組んで、大川素濃と小林桂代を上から下まで見渡した。「今日で10日目です。店舗を引き取りに来ました。」