070:光速で顔面打撃、報いが降りかかる

その言葉を言い終えると、雨子は振り返ることもなく寝室へと向かった。

その後ろ姿を見て、鈴木慧子は困ったような表情を浮かべた。

ルームメイトとして、注意すべきことは全て注意したのだから、もしその皇妃物語に何か問題があったとしても、自分は後ろめたさを感じることはないだろう。

一方。

部屋に戻った雨子は、鏡の前に座り、買ったばかりのシミ取り製品を丁寧に塗り始めた。

彼女の顔立ちは悪くなかった。

ただ、鼻の両脇にびっしりとそばかすがあった。幸い、そばかすはニキビと違って、ファンデーションで隠すことができる。

だから普段は誰も気付かない。

化粧を落とした時だけわかるのだが、この理由で、雨子の青葉市の地元の男性と付き合いたいという願いは叶わないままだった。

青葉市民は条件が良く、男性たちは素顔も綺麗な女の子を求めている。