「はい。」と言うと、山本世月は何かを思い出したように「あの小林綾乃の親友のことですか?」
「そうよ。」
山本世月は目を細めて、心の中で、あの小林綾乃には一体どんな魅力があって、娘がこれほど夢中になっているのだろうと考えた。
渡辺麗希は続けて言った。「お母さん、今度一緒に銀杏通りの家に行きましょう。綾乃ちゃんを紹介させてください。本当に綺麗な子なんです!」
山本世月は鼻で笑って、「綺麗な人なんて沢山見てきたわ。大塚耀玉より綺麗な人なんて見たことないわ。」
大塚耀玉。
今をときめく女優。
山本世月の憧れの存在でもある。
渡辺麗希は言った。「綾乃ちゃんは大塚耀玉よりずっと綺麗よ。本当です、信じてください。」
山本世月は微笑んで、何も言わなかった。
母のこの表情を見て、渡辺麗希は母が自分の言葉を全く信用していないことがわかった。