「はい。」と言うと、山本世月は何かを思い出したように「あの小林綾乃の親友のことですか?」
「そうよ。」
山本世月は目を細めて、心の中で、あの小林綾乃には一体どんな魅力があって、娘がこれほど夢中になっているのだろうと考えた。
渡辺麗希は続けて言った。「お母さん、今度一緒に銀杏通りの家に行きましょう。綾乃ちゃんを紹介させてください。本当に綺麗な子なんです!」
山本世月は鼻で笑って、「綺麗な人なんて沢山見てきたわ。大塚耀玉より綺麗な人なんて見たことないわ。」
大塚耀玉。
今をときめく女優。
山本世月の憧れの存在でもある。
渡辺麗希は言った。「綾乃ちゃんは大塚耀玉よりずっと綺麗よ。本当です、信じてください。」
山本世月は微笑んで、何も言わなかった。
母のこの表情を見て、渡辺麗希は母が自分の言葉を全く信用していないことがわかった。
渡辺麗希は山本世月を見て、「お母さん、昨日持って帰ってきたスキンケア用品、使ってみました?」
「あの美人亭のことかしら?」山本世月は尋ねた。
「はい。」
山本世月は目を細めて、「あなたのあの友達からもらったの?」
渡辺麗希はうなずいた。
山本世月は少し考えてから言った。「正直に言うと、このスキンケア用品は安すぎて、ちょっと使うのが怖いわ。」
渡辺麗希は呆れて、「お母さん、昔はそんなじゃなかったでしょう。小さい頃、2元の雪花クリームでも喜んで使ってたじゃない!」
「それは昔の話よ。今のお母さんは贅沢になったのよ。」
そう言って、山本世月は階段を上がって行った。
彼女はメイクを落としてスキンケアを始めた。
スキンケア用品を選ぶとき、突然娘の言葉を思い出した。
そうね。
昔は2元の雪花クリームでも使っていた。
どうして今は贅沢になってしまったのかしら?
そう考えながら、1万元もする美容クリームに手を伸ばそうとした手が、美人亭の美白セットに向かった。
娘があれほど友達を信頼しているのなら。
試してみましょう。
ちょうど最近肌が少し黄ばんでいたし。
効果があるといいわね。
蓋を開けると、とても自然な良い香りがした。
山本世月は深く息を吸って、笑いながら言った。「香りもなかなかいいじゃない。」