077:恐ろしい実力、身分を明かす_2

今日の面会のために、井上森は彼女とのデートまでキャンセルした。

まさか、こんなことになるとは!

斎藤素子に来てもらえばよかった。

彼女は来たがっていたのに。

[逃げる?卒業論文諦めるの?]と木下斌が返信した。

卒業論文という言葉を見た瞬間、井上森はその考えを即座に打ち消し、おとなしく椅子に座った。

安田振蔵は二人の学生よりもずっと落ち着いていた。女性が医学で何か成果を上げられるとは思っていなかったが、これまでの経験から、誰のことも軽視してはいけないと分かっていた。

そのため、安田振蔵は小林綾乃に微笑みかけ、「小林さんは、この件についてどのようなご意見をお持ちですか?」と尋ねた。

小林綾乃はそこに座ったまま、実年齢とは不釣り合いな落ち着きを見せながら、「まずは皆さんの実験の結論と過程をお聞かせください」と言った。