安田振蔵も彼の二人の学生も、小林綾乃が間違った部屋に来たと思った。
あるいは。
彼女はここのウェイトレスだろう。
誰も彼女を「おじいさん」という言葉に結びつけなかった。
予約してある?
もしかして自分が間違った部屋に来てしまったのか?
そう聞いて、小林綾乃は一歩後ろに下がり、部屋番号を確認した。
間違いない。
L2の個室だ。
小林綾乃は前に立っている安田院長を見て、赤い唇を開いた。「安田院長ですか?」
「はい、そうです」安田振蔵は頷いた。
小林綾乃は続けて言った:「私は小林綾乃です」
小林なに?
小林五郎?
この瞬間、安田振蔵と二人の学生は幻聴を聞いたと思った。
ありえない。
絶対にありえない。
小林おじいさんがこんなに若いはずがない。
しかも、女の子?
安田振蔵が最初に反応を取り戻し、続けて言った:「あなたはおじいさんのお孫さんですね?」