この世の中で小林桂代のような姉はそうそういないものだ!
山下おばあさんは大川素濃を見て、笑いながら言った。「素濃さんもとても素晴らしいわ。今風に言えば、お二人は双方向の思いやりね」
小林桂代は苦労して義妹を育て上げた。
大川素濃は義理の妹として感謝の気持ちを忘れず、小林桂代の恩を覚えていた。それは小林桂代にとって最高の応答だった。
そう言って、山下おばあさんは続けた。「もう一人妹さんがいらっしゃるんでしょう?その妹さんは今どうしていますか?」
小林桂美の話題が出ると、大川素濃の表情が曇った。彼女は何も言わなかったが、山下おばあさんは彼女の目つきですべてを理解した。
小林桂代は簡潔に答えた。「妹は青葉市の地元の人と結婚して、まあまあ上手くやっています」
本当に上手くいっているなら、大川素濃が一言も言わないはずがない。
山下おばあさんはそれ以上聞かずに、小林桂代に笑顔を向けて言った。「桂代さん、善い行いには善い報いがあるものよ。これからはもっと良くなっていくわ」
小林桂代はうなずいた。
山下おばあさんは周りを見回して、興味深そうに尋ねた。「そういえば、綾乃ちゃんはどこ?見かけないけど」
「綾乃は最近店に来ていないんです」と小林桂代は答えた。
山下おばあさんは続けた。「実は綾乃ちゃんに話があるの。桂代さん、綾乃ちゃんを呼んでもらえないかしら?」
彼女は本題を忘れていなかった。
今回来たのは主に安田振蔵の頼みを聞くためだった。
「もちろんです」小林桂代は軽くうなずいて、「LINEで今時間があるか聞いてみます」
小林綾乃はちょうど近くにいて、小林桂代からメッセージを受け取るとすぐに店に来た。
小林綾乃を見て、山下おばあさんは慈愛に満ちた笑顔を浮かべた。「綾乃ちゃん、久しぶりね」
「金田おばあさん、お久しぶりです」小林綾乃は近寄って、山下おばあさんを軽く抱きしめた。
老若二人は久しぶりの再会だったが、距離感は全く感じられなかった。
山下おばあさん自身も不思議に思っていた。
小林綾乃と知り合ってそれほど長くないはずなのに、彼女を見ると自分の孫を見ているような気持ちになるのだ。
しばらく話をした後、山下おばあさんは安田振蔵のことを話題にした。
「綾乃ちゃん、会ってみる?」
小林綾乃は眉を少し上げた。「IS実験ですか?」