北区の佐藤家当主の奥様は、山本世月と同じように、一時的に青葉市に引っ越してきて、しばらく滞在することになった。
佐藤家は、れっきとした都内サークルの名門だった。
そのため、橋本夢は裕福な奥様たちのサークルに加入するやいなや、皆から熱烈な歓迎を受けた。誰もが彼女を通じて西京とのパイプを作りたがっていた。
しかし橋本夢は生来冷淡な性格で、裕福な奥様たちのサークルに加入はしたものの、誰とも距離を置いていた。
橋本夢にはほとんど欠点がなかった。
唯一の欠点は、出産の際にケアを怠ったせいで、顔中にびっしりとそばかすができてしまったことだった。そのそばかすは、ファンデーションでも隠しきれないほどで、山本世月は、橋本夢が冷淡なのは、このそばかすが関係しているのではないかと推測していた。
もし彼女が橋本夢の顔のそばかすを全て消すことができれば...それをきっかけに橋本夢と友情を築き、ひょっとしたら夫の西京とのパイプ作りにも役立つかもしれない。
山本世月は美人亭のフェニックスシリーズを使ったことはなかったが、美白クリームがこれほど効果的なら、フェニックスはきっともっとすごいはずだ!
そうでなければ、なぜいつも品切れになるのだろう?
自分の友人が認められたことに、渡辺麗希はもちろん喜んだ。「お母さん、やっと綾乃からのスキンケア製品が良いものだと信じてくれましたか?」
「ええ、信じたわ」山本世月は何度もうなずいた。
渡辺麗希は山本世月を見て、興味深そうに尋ねた。「お母さん、お顔にシミもないのに、フェニックスを何に使うんですか?」
山本世月は答えた。「人にあげるの」
人にあげる?
それを聞いて、渡辺麗希はうなずいた。「じゃあ、明日綾乃に聞いてみます」
「もし手に入れられたら、二セット頼んでちょうだい。お金は問題ないわ!」山本世月はすぐに付け加えた。
「はい」ちょうど渡辺麗希は明日、小林綾乃とタピオカを飲む約束をしていた。「お母さん、他に用事がなければ、私そろそろ行きますね」
山本世月は渡辺麗希の後ろ姿について行きながら、重ねて言い付けた。「麗希、この件は必ず忘れないでね」
修理店にて。
一橋景吾は入り口に立って、ポーズを取り、通りすがりの若い女性の注目を集めていた。
彼はなかなかのイケメンだった。