まして150万円もの金額なのに。
中年女性が続けて言った。「あなたの情報は確かなの?本当にそこは立ち退きになるの?」
もし間違っていたら、パンツ一枚も残らないほどの損失を被ることになる。
「絶対に確かだ」中年男性は目を細めて言った。「私の弟がどんな仕事をしているか忘れないでくれ。私たちが金持ちになれるかどうかは、この一発にかかっているんだ。聞いたところによると、今回の立ち退きは世帯人数で部屋を分配するらしい。うちは全部で8人いる。少なくとも8部屋はもらえるはずだ。それに経済補償金まで出るんだ!」
その言葉を聞いて、後ろにいたボディーガードのような若い男性二人が言った。「お父さん、それじゃあ僕たちも一人一部屋もらえるってことですか?」
中年男性はうなずいた。
これで二人の息子の結婚用の家も確保できる。
老後の住まいの心配もなくなる。
一夜にして大金持ちになるのと変わらない。
中年男性は金子大志といい、中年女性は彼の妻の山口茹美である。
二人は決して大金持ちではなく、ごく普通の青葉市の地元民だ。二人には息子が二人と娘が一人いて、現在娘は既に嫁いでいるが、まだ戸籍は移していない。青葉市の不動産価格が日に日に上がっていく中、二人の息子の結婚用の家を買う余裕がなく、やむを得ずこのような策を講じることにした。
ちょうど金子大志の弟が関係部署で働いており、前回弟と話をしている時に偶然、銀杏通りのあたりの一画が取り壊されてショッピングモールになるという話を聞いた。彼は特に詳しく調べ、何度か実地調査をした後、小林桂美の小さなスーパーが立ち退き範囲内にあることを確認し、妻と二人の息子とともにこのような芝居を打つことにしたのだ。
金子大志は長男の金子昌也を見て、「明日すぐに小原静と結婚証明書を取りに行け。それから急いで彼女の戸籍をこちらに移すんだ。もう一部屋余分にもらえるようにな」と言った。
金子家は今、娘と娘婿、孫を含めて全部で8人いるが、人の心は欲深いもので、誰もがもう一部屋余分に欲しいと思うものだ。
それを聞いて、金子昌也はうなずいて「はい」と答えた。
次男の金子財弥が続けて言った。「お父さん、僕も彼女と結婚証明書を取りに行きましょうか?そうすれば家族でもう一部屋もらえますよね?」