その時、上田月見は目が回るような思いがした。
後悔の念で胸が一杯だった。
小林桂代の言っていた小さな看板が美人亭だったなんて、思いもよらなかった。
もしそれを知っていたら、小林綾乃たちをきちんとおもてなししていたはずだ。
上田月見は深く息を吸い、落ち着こうと努めながら坂本鈴を見た。顔から軽蔑の色は完全に消えていた。「坂本さん、冗談じゃないですよね?」
坂本鈴が自分をからかっているのではないかと思えてならなかった。
あの美人亭なのだ。
ダフ屋を使っても手に入らないものを。
坂本鈴は真剣な表情で言った。「こんな冗談を言って何になるの?信じられないなら、店に来て見てみなよ。彼女たちがくれたフェニックスセットもまだあるわ」
先日、上田月見は坂本鈴と一緒に並んだが、二人とも何も買えずに帰った。