083:後悔が止まらない、グリーン茶_7

だから上田月見は小林綾乃たちの後ろ姿を見送りながら、引き止めようとはしなかった。

すぐに、小林綾乃は上田月見の店の向かいの店舗に着いた。

ここも賃貸募集中だった。

ここのオーナーは坂本鈴といい、四十九歳だがお手入れが行き届いていて、自分から言わなければ実年齢はほとんどわからないほどだった。

小林桂代が四十歳にもならないのに娘が十八歳だと知って、坂本鈴は非常に羨ましがった。「まあ、あなたは本当に幸せね!こんなに若いのに、もう娘さんがこんなに大きくなって!」

小林桂代は少し照れくさそうに、「若すぎて自分を守る方法も知らなかったんです」

でも彼女は後悔したことは一度もない。

もし時間を巻き戻せたとしても、やはり小林綾乃を産むことを選ぶだろう。

すぐに、小林綾乃は坂本鈴と家賃と契約期間について話をまとめた。

月額家賃二万三千円、契約期間五年、敷金は六万円。

全ての契約書にサインを終えた後、坂本鈴は笑顔で尋ねた。「何を販売される予定なんですか?」

「スキンケア製品です」と小林桂代が答えた。

坂本鈴は「チェーン店ですか、それともフランチャイズですか?」

「チェーン店です」と小林桂代は続けて「ここを入れて現在三店舗目になります」

すでに二店舗あって、さらに支店を開こうとしているということは、商売が上手くいっているということだ。坂本鈴は興味深そうに「どのブランドのスキンケア製品を扱われるんですか?」

「小さなブランドです」

小さなブランド?

もしかして、SNSビジネスの類?

坂本鈴は笑いながら「自社ブランドを三店舗のチェーン店にまで成長させられるということは、本当に評判がいいということですね!どのブランドか教えていただけますか?」

小林桂代は淡々とした口調で「美人亭です」

美人亭!

これを聞いた坂本鈴の表情が一変し、小林桂代の手をしっかりと掴んで「ま、まあ!今おっしゃったのは?」

坂本鈴は本当に興奮していた!

彼女も美人亭の熱心な顧客で、先週は朝の四時前に並びに行ったのに買えず、整理券をもらって、あと三日待つように言われたのだ。

彼女は美人亭が北定区の近所に店を出してくれることを夢見ていた。

そうすれば買い物に行くのにそんなに遠くまで行かなくて済む。

まさか、美人亭が彼女の家の近所どころか、彼女の物件に出店してくるとは。