しかし、なぜか志村文礼は無意識のうちに、大江雲斗が火洲に左遷されたのは小林綾乃と無関係ではないと疑っていた。
そして。
志村文礼の直感が告げていた。小林綾乃は本当は見習いになるつもりなどなかったのだと。
彼女は若い女の子で、重いものを持つこともできず、修理店では...
邪魔になるだけで、まったく役に立たない存在だった。
だから。
小林綾乃はきっと山下様の身分を知って、わざと近づいて、彼の注意を引こうとしているのだ。
山下様は女性との付き合いがなかったため、若い女の子の手口を知らなかった。
そうだ。
彼は用心しなければならない。
必ず山下様の前で小林綾乃の本性を暴いてやる。
そう考えながら、志村文礼は目を細めた。
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山下家。
山下おばあさんはボロボロの服を着て、外出しようとしていた。
白川露依がこのとき笑みを浮かべながら近づいてきた。「お母さん、どうでした?昨日のあの子、失礼な態度を取りましたか?」
「まさか!綾乃は私にとても親切よ」と言って、山下おばあさんは続けた。「私が貧乏になっても嫌がらず、毎日店に段ボールを取りに来ていいって言ってくれたのよ」
白川露依は冷ややかに笑った。「お母さん、あの子はきっとお母さんをただの掃除係として使っているんじゃないですか!」
あの子は本当に腹黒いわ。
山下おばあさんはもうこんな年なのに、まだそんな仕事をさせるなんて。
「違うわよ!あなたは何もわかっていない」と山下おばあさんはすぐに説明した。「綾乃の店には毎日100キロ以上の段ボールがあって、廃品回収業者が直接店に来て回収するのよ。誰かが片付けに行く必要なんてないの。それどころか、回収業者がお金を払ってくれるのよ!」
段ボールは1キロ80円で、100キロ以上あれば180円くらいにはなるわ。
それを聞いて、白川露依は眉をひそめた。「本当ですか?段ボールでお金になるんですか?」
どうも信じられない気がする。
白川露依にとって、段ボールはただのゴミでしかなかった。
ゴミでお金が稼げるなんて、誰が想像できただろう?
山下おばあさんは白川露依を見て、少し呆れたように言った。「あなたは本当に世間知らずね!」
良い暮らしをし過ぎると、贅沢な考えになってしまうものだ。