小林強輝は続けて言った。「じゃあ、買おう」
小林綾乃が支払いを済ませて部屋を確保した。彼らが支払いを済ませなければ、27階の部屋は他の人に買われてしまうところだった。
大川素濃は驚いて「見に来ないの?」と聞いた。
小林強輝は笑って「あなたがいいと思えばいいよ」と答えた。
主に綾乃がいいと思えばそれでよかった。
小林強輝は綾乃を絶対的に信頼していた。
「じゃあ、私も綾乃と一緒に支払いを済ませるわ」大川素濃は小林強輝がこんなにあっさり同意するとは思っていなかった。「東部郊外の物件はゆっくり考えて、まずはこの物件を購入しましょう」
「はい」
電話を切ると、大川素濃は小林綾乃を見て「綾乃、おじさんがあなたが買うならって言ってるわ」と言った。
一度購入を決めると、支払いはとても早かった。
元々大川素濃は頭金だけ支払うつもりだったが、帝苑マンションはローンを受け付けていなかった。
小林綾乃はカードを取り出し、淡々とした口調で「おばさん、私が先に立て替えておきましょうか?後で分配金から差し引けばいいですよね?」と言った。
大川素濃は今毎月150万円ほどの分配金を受け取っているので、700万円は数ヶ月で返済できる。
「いいわよ、綾乃、お手数をかけるわね」
小林桂代は笑って「家族なんだから、何が面倒なのよ?」と言った。
支払いを済ませた。
大川素濃は帝苑マンションの鍵とセキュリティカードを手に取り、まだ現実感がなかった。
以前は家を買うときは周辺を何度も見に行ったものだった。
今回はこんなに簡単に購入できた!
しかも1600万円もする物件を。
本当に夢じゃないの?
大川素濃は空を見上げ、隣にいる小林桂代を見て「お姉さん、これって現実に感じる?」と聞いた。
小林桂代は首を振って「非現実的ね」と答えた。
大川素濃は笑い出し、小林桂代の手を握って「お姉さん、私も今あなたと同じ気持ち。まるで歩いているのが浮いているみたい」と言った。
まるで夢を見ているようだった。
半年前まで実家で子育てをしていて、夫が青葉市で安定した仕事を持ち、家を買って落ち着いたことが最大の幸せだった。
今では帝苑マンションの物件まで買えるようになった。
そう言って、大川素濃はさらに「お姉さん、すぐに引っ越す予定?それとも改装する?」と尋ねた。