彼女は大川素濃と小林桂代の言葉を全てでたらめだと決めつけた。
この二人はでたらめを言っているのではないか?
そう言って、彼女は背を向けて歩き出した。
小林桂美の後ろ姿を見て、小林桂代は何かを思い出したように声をかけた。「桂美、ちょっと待って。」
「どうしたの?」小林桂美は不思議そうに振り返った。
小林桂代は続けて言った。「明日は新店のオープンで昼間は忙しくて行けないかもしれないけど、夜は何時から食事?」
青葉市では引っ越し祝いは夜に親戚や友人を招いて食事をするのが普通だった。
親しい人の中には昼間に来る人も少数いた。
小林桂代と小林桂美は姉妹なので、本来なら昼間から家の暖めに行くべきだが、明日の昼間は本当に時間が取れないので、夜遅くになってしまう。
小林桂美は支店開店というのが言い訳に過ぎないことを知っていた。小林桂代のような人が支店を開くなんて、天に登るより難しい。