一方で。
城井定邦は車で桐山芝織と桐山明晴を送っていった。
車の中で。
桐山芝織は顔を曇らせ、「明晴、持参金を承諾するべきじゃなかったわ!」
誰も相手にしない中古品のくせに持参金なんか欲しがるなんて。
本当に厚かましい。
桐山明晴は母親の手を軽く叩き、笑いながら言った。「お母さん、これは子供を手に入れるためには餌が必要ってことよ。小林桂代が私たちの家に嫁いできたら、そのお金は結局私たちのものでしょう?彼女が逃げ出せるとでも?」
そう言いながらも、桐山芝織の心はまだすっきりしなかった。
彼女からすれば、小林桂代は持参金なしどころか、逆に持参金を持ってくるべきだと思っていた。
「彼女以外にも、お兄さんが結婚できる相手はいくらでもいるわ!」桐山芝織は冷ややかに鼻を鳴らした。
桐山明晴は笑って言った。「でも、他の女性は小林綾乃のような可愛い娘を連れてはいないわ。」
その言葉を聞いて、城井定邦は眉をひそめた。
彼はまだ母と妻の計画を知らなかったが、小林綾乃の名前を聞いて少し不思議に思った。
そう言って、桐山明晴は続けた。「お母さん、安心して。私のすることには全て分別があるわ。」
青葉市には金に困らない御曹司がたくさんいる。
そして小林綾乃は稀に見る美人だ。
最初、桐山明晴は小林綾乃がただ少しかわいいだけだと思っていたが、実際に会ってみると、金屋に匿われるだけの価値があると感じた。
そう考えると、桐山明晴は目を細めた。
三年前、桐山明晴は起業したが、起業の道は一見簡単そうに見えて実は茨の道で、暗黙のルールだらけだった。彼女は青葉市の地元民とはいえ、金持ちと比べるとまだまだ差があった。彼女が経営しているのは包装箱の会社で、革新性も特色もなく、彼女自身も若くて可愛い女の子というわけでもなく、この三年間ほとんど注文がなかった。このままでは会社が倒産してしまうと思われた。
ちょうど、次の取引相手として青葉市の有名な御曹司がいた。
この御曹司には他に趣味がない。
ただ清純な女子大生を囲うのが好きなだけだ。
小林綾乃のような子なら、きっと更に気に入るはずだ。
小林綾乃はもともと世間知らずの田舎娘だし、御曹司に気に入られるのも彼女の幸せだろう。
そうすれば、小林綾乃は彼女に感謝することになるかもしれない。