安田振蔵は前方を見つめ、「待ち続けよう」と言った。
安田振蔵のその様子を見て、王丸先生もそれ以上何も言えず、ただ待ち続けるしかなかった。
そのとき、車のヘッドライトがこちらに向かって照らされ、黄色いタクシーが病院の入り口に停まった。
安田振蔵は興奮して「きっと小林さんが来たんだ」と言った。
三人の医師は直ちに安田振蔵の後に続いて道路の端まで歩いていった。
次の瞬間。
細い影が車の後部座席から出てきた。
車のライトに逆らって。
顔がよく見えなかった。
しかし安田振蔵は一目で分かった。「小林さんだ!」
「小林さん、やっと来てくださいました!」安田振蔵は小林綾乃の側に歩み寄り、自然に彼女の手から医療バッグを受け取った。
小林綾乃は冷静な表情で「本来なら30分で着くはずでしたが、途中渋滞に巻き込まれました」と言った。