城井芳子は言った。「私たちは同じ指導教官の下で学んだんです。彼は私より3学年上で、薬剤部の主任です」
そう言いながら、城井芳子は何かを見つけたように笑って言った。「前にいるのが私の先輩のようです」
そう言って、城井芳子は声をかけた。「中島先輩」
声を聞いて、白衣を着た男性が振り返って城井芳子を見て、笑顔でこちらに歩いてきた。「芳子」
城井芳子は続けて言った。「中島先輩、こちらは私のいとこの兄と、お嫂さんです」
中島一興は二人を見て笑顔で言った。「城井さん、私は中島一興です」
小林桂美は、城井芳子を通じて青葉総合病院の主任と知り合えるとは思ってもみなかったので、とても光栄に感じた。
これが社会的なコネの重要性だ。
城井家の者は皆、青葉市の地元の人で、しかも皆非常に優秀だから、彼らの知り合いも一人一人が優秀な人ばかりだ。
小林桂代のような田舎者が青葉総合病院の主任と知り合えるだろうか?
この妹がいなければ、小林桂代は何者でもない。
この時、小林桂美はこの関係を絶ったのは良かった、素晴らしかったと感じた。
これからの彼女の人生はますます良くなっていくだろう。
小林桂代は小林綾乃と一緒に田舎に戻ればいい。
小林桂美は腫れた顔で笑顔を作って言った。「中島主任!」
城井定邦は中島一興と握手を交わした。
中島一興は城井芳子の方を向いて、「芳子、君の兄と嫂さんが病院で何か困ったことがあったら、直接私に電話してくれていいよ。他の用事があるので、先に失礼するよ!」
「はい、中島先輩」城井芳子は頷いた。
中島一興の後ろ姿を見ながら、小林桂美は城井芳子の方を向いて、続けて言った。「芳美、あなたの先輩には彼女がいないの?」
「まだいないみたいです」と城井芳子は答えた。
それを聞いて、小林桂美はすぐに言った。「じゃあ、彼はあなたのことが好きなんじゃない?」
城井芳子は特別美人というわけではないが、悪くもなく、若くて活力がある。
中島一興が彼女に好意を持つのも当然だ。
城井芳子は笑って言った。「私の先輩はとても優秀で、病院には彼のことを密かに想う人がたくさんいるんです!私なんか眼中にないですよ!」
この言葉を聞いて、小林桂美の目に失望の色が浮かんだ。
そうだ。
相手は主任なのだから。
そう簡単には手が届かないはずだ。