あの患者が来てから、病院全体が一触即発の状態になった。
普段めったに見かけない幹部たちが揃って集まっていた。
相手は何かの大物なのだろうか?
市長が入院してきても、病院がこれほど大騒ぎになることはなかったのに。
王丸先生は首を振って、「分からない」と言った。
大川先生は前を歩く院長を見て、小声で数言を漏らした。
声が小さく、三人にしか聞こえなかった。
それを聞いて、木下先生は目を見開いた。「本当なの!」
大川先生は頷いて、「間違いなくあの方だと思う。藤田先生が顔を見たって...」
普段はニュースや新聞でしか見られない顔だ。
王丸先生も喉を鳴らし、声まで震えながら言った。「な、なるほど、安田院長と馬場副院長が緊張するわけだ!もし私たちの病院で何か問題が起きたら...」
後の言葉は言うまでもなかった。