「はい、おばさん」
小林桂美一家をもてなすため、小林桂代は沢山の料理を作ったが、今は食べ散らかされたテーブルだけが残っていた。
小林強輝という大の男にこんな仕事をさせるのは相応しくない。ましてや小林強輝は目上の人だ。小林綾乃は立ち上がってテーブルを片付けようとした。「おじさん、私がやります!」
しかし小林強輝は小林綾乃の手から皿を取り上げ、彼女を部屋の中へ押しやった。「宿題をしなさい。子供が余計なことに首を突っ込むな!」
そう言うと、小林強輝はドアを閉め、小林綾乃に一切の機会を与えなかった。
小林綾乃は仕方なく部屋に戻った。パソコンを開こうとした瞬間、携帯が鳴った。
不明な番号からだった。
小林綾乃は電話に出た。「もしもし」
電話の向こうから安田振蔵の切迫した声が聞こえてきた。「小林さん、私は安田です。病院で緊急手術の患者が来ました。患者の身分が特殊で、命に関わる状況です!当院には今、執刀できる医師がいません。申し訳ありませんが、来ていただけませんか?」