これを考えると、馬場康誠は気づかれないように眉をひそめた。
他の医師たちも焦っていた。
そのとき、小島が廊下から小走りで駆けてきた。「安田院長、免責同意書の準備ができました。」
安田院長は小島から書類を受け取り、見もせずにすぐにペンで署名し、それを馬場康誠に渡した。「馬場副院長、これで安心できましたか?」
馬場康誠は免責同意書を受け取り、安田振蔵の署名を見て、やっと安堵のため息をついた。
これで何が起きても自分には関係ない。
西京への異動も予定通りだ。
他の医師たちもすぐに馬場康誠の手にある免責同意書を見に駆け寄った。
一方。
診察室内。
城井芳子は小林桂美の顔の怪我を診察し、こう言った。「大した問題はありません。定邦兄さん、お嫂さんに塗り薬を処方しますので、帰ってから定期的に塗ってください。それと、この期間は傷口を水に触れさせないでください。炎症を起こすと厄介なことになりますから。」