老人は見識の広い人物でしたが、この光景を目にして、思わず吐き気を催しました。
これらの虫を見て。
馬場康誠の元々蒼白だった顔が、今や紙のように真っ白になりました。
彼には想像もつきませんでした。小林綾乃の医術がこれほどまでに深いものだとは。
機械でさえ検出できなかった寄生虫を、彼女は脈を診て、瞳孔を見ただけで発見できたのです。
これは恐ろしいほどの腕前だ!
小林綾乃は一体何者なのか?
名医の子孫なのだろうか?
しかし、医学界に小林姓の名医がいたという話は聞いたことがない。
小林綾乃は一体誰なのか?
馬場康誠は後悔していました。
こうなることが分かっていれば、安田振蔵に反対などしなければよかった。安田振蔵のように小林綾乃を信じるべきだった。
免責同意書なんて署名するべきではなかった。
馬場康誠が命の保険だと思っていた同意書は、今や熱い芋のように手に負えないものとなっていました。
分からない。
今夜が過ぎた後、彼の副院長の職が保てるかどうか。
馬場康誠は考えれば考えるほど不安になり、額に冷や汗が浮かびました。
ほとんど立っていられないほどでした。
青木玉樹が一歩前に出て、安田振蔵を見つめ、より敬意を込めた態度で尋ねました。「安田院長、これらの寄生虫はどのようにして老人の体内に入り込んだのでしょうか?今後、何か注意すべきことはありますか?」
安田振蔵は続けて言いました。「小林さんの話では、老人のこの状態は川魚の刺身を食べたことが原因である可能性が高いとのことです。老人は普段から川魚の刺身を食べる習慣がありましたか?」
これを聞いて、青木玉樹は軽く頷きました。「はい、老人の本籍は広山市で、故郷では魚の刺身を特に好んで食べていました。」
魚の刺身というのは、コイやソウギョなどの川魚の刺身のことです。
「なるほど」安田振蔵は目を細めて言いました。「海の魚であれば、寄生虫が人体内でこれほど生存しやすくはないでしょう。やはり川魚は淡水なので...」
これで老人の体内にこれほど多くの寄生虫がいた理由が説明できます。
言い終わると、安田振蔵は続けて言いました。「魚の刺身はとても寄生虫に感染しやすいものです。今後はなるべく控えめにし、できれば食べないほうがよいでしょう。」
「はい。」青木秘書部長は頷きました。