092:謎の小林さん_3

志村文礼も昨夜の自分の行動が安田振蔵の怒りを買ったことを知っていた。確かにこの件は自分が悪かった。彼も反抗的な人間ではないので、すぐに謝罪した。「安田院長、この件は全て私の責任です!今何を言っても後の祭りですが!」

そう言って、志村文礼は続けた。「ですが、もう一度チャンスをいただけないでしょうか。二度と同じ過ちは繰り返さないことをお約束します!」

どう考えても、志村文礼は大家の藤原天佑の弟子なのだから、それくらいの面子は立ててやらねばならない。

それに、志村文礼の謝罪の態度は悪くなかった。

それを聞いて、安田振蔵は顔を上げて志村文礼を見つめ、疲れた様子で太陽穴を押さえながら言った。「志村先生、実は私はあなたに特別な要求はないんです。あなたの立場を考えれば、当院で名を連ねていただけるだけでも光栄なことです。しかし、当院の医師として名を連ねている以上は、当院の規則を守っていただかなければなりません。たとえ勤務時間外であっても、携帯電話は通じる状態にしておいてください。」

そこで一旦言葉を切り、安田振蔵は続けた。「一つだけ安心していただきたいのは、緊急事態でない限り、病院から連絡することはありません。」

「分かりました。」志村文礼は頷いた。「安田院長、ご安心ください。これからは仕事用の携帯は24時間オンにしておきます。」

「よろしい。」安田振蔵は軽く頷いた。

志村文礼は安田振蔵を見つめ、続けて尋ねた。「安田院長、開頭手術を行った医師は誰なのか、お聞きしてもよろしいでしょうか?」

彼には想像もつかなかった。自分以外に、誰がこのような高度な手術を成功させられるのか。

彼は患者のカルテを見た。

これは普通の脳梗塞の手術ではない!

彼自身でさえ、必ずしも成功を保証できないような手術だった。

しかし相手は軽々と手術を成功させた。

明らかに。

この人物は並の医師ではない。

安田振蔵は淡々とした口調で答えた。「彼女は当院の医師ではありません。」

青葉総合病院の医師ではない?

志村文礼はさらに興味を持ち、続けて尋ねた。「では、その方は一体誰なのですか?」

安田振蔵は淡々と答えた。「小林さんです。」

小林さん?

志村文礼はこの呼び方を聞くのは初めてではなかった。