静かな部屋の中で心電図の音だけが聞こえていた。
皆が小林綾乃の答えを待っていた。
五、六分後、小林綾乃は患者の手首から手を離した。
安田振蔵は直ちに彼女の側に寄り、低い声で尋ねた。「小林さん、どうですか?」
小林綾乃は淡々とした口調で答えた。「直ちに開頭手術を行い、頭蓋内の寄生虫を除去する必要があります。」
寄生虫?
これを聞いて、安田振蔵は眉をしかめた。「小林さん、見間違いではありませんか?患者さんは頭蓋内の病変組織による内出血です。」
彼らは患者の頭部CTを撮っていた。
CTでは頭蓋内の病変組織の位置がはっきりと映っており、今必要なのは開頭して病変組織を切除することで、それによってのみ治癒の可能性があった。
しかし、病変組織が小脳付近にあり、少しでも手を誤れば生命の危険があった!
一般の患者なら、術前のリスク説明書にサインをもらえばいい。
しかし、この患者は一般人ではなかった。
そのため。
青葉総合病院では誰一人として手術を引き受けようとする医師がいなかった。
しかし今は...
小林綾乃は患者の頭蓋内に寄生虫がいると言っている。
これは彼らの検査結果と明らかに矛盾していた。
小林綾乃は淡々とした口調で続けた。「この種の寄生虫は透明で、機械では検出できません。そのため、CTでは寄生虫によって破壊された出血組織しか映りません。開頭手術で病変組織を切除するだけでは、対症療法にしかなりません。」
ここまで話して、小林綾乃はベッドに横たわる患者を見やった。「もし私の推測が正しければ、患者さんは普段から刺身などの生魚介類を好んで食べていたはずです。」
病因を小林綾乃は突き止めていた。
しかし....
安田振蔵も他の医師たちも何も言わなかった。
安田振蔵は目を細めた。「小林さん、機械が間違うはずがありません。こうしましょう。今は病変組織の切除だけを担当してください。」
寄生虫は確実に小林綾乃の誤診だろう。
結局、小林綾乃は脈を取って瞳孔を見ただけなのだ。
どうやって寄生虫の存在を知ったというのか?
小林綾乃の目にX線機能でもついているのか?
機械よりも優れているとでも?
そんなことはあり得ない。