091:小林さんは奇跡そのもの_6

彼女は小林桂代に頼むことなどしないだろう。

今では小林桂代と小林強輝が二人で彼女たちの前に跪いたとしても、彼女は二人を一瞥もしないだろう。

それを聞いて、城井定邦もそれ以上何も言わなかった。「まあいい、あなたがわかっていればいいんだ。」

**

一方、手術室の外では。

安田振蔵が落ち着かない様子で行ったり来たりしており、顔には不安の色が浮かんでいた。

しかし、手術室からは何の音も聞こえてこなかった。

対照的に、馬場康誠の表情はずっと余裕があった。彼は同意書をしっかりと握りしめ、次の瞬間に誰かに盗まれてしまうのではないかと心配していた。

今やこの同意書は単なる免責同意書ではなく、命を守る契約書となっていた。

その時。

手術室内。

ピピピ--

モニターから警告音が鳴り響いた。

医療助手が青ざめた顔で言った。「小林さん、患者のバイタルサインが全て低下しています。心拍数も100まで下がっています。すぐに除細動器を準備する必要があります!」

小林綾乃は手術用鉗子を持ち、患者の頭蓋内から寄生虫を一匹一匹丁寧に取り除いていた。

肉眼では透明な虫体は見えにくかったが、それらは血液で染まっていた。

そう見ていると。

思わず背筋が凍るような光景だった。

このような恐ろしい光景を目の当たりにすれば、普通の人なら顔面蒼白になっているだろうが、小林綾乃はそうではなかった。

彼女は眉一つ動かさなかった。

「必要ありません」医療助手の声を聞いても、小林綾乃は相変わらず落ち着いた様子で、「ガーゼを持ってきてください」と言った。

小林綾乃の返答を聞いて、医療助手は目を見開いた。

患者の状態がこれほど危機的なのに、小林綾乃は除細動器を使おうとしないなんて!

次の瞬間、器械看護師が小林綾乃にガーゼを手渡した。

小林綾乃はガーゼを受け取り、頭皮を開いて、止血のためにガーゼを一気に詰め込んだ。

不思議なことに、彼女の乳白色のゴム手袋には血痕一つついていなかった。

小林綾乃は手を止めることなく、モニターの警告音も気にせず、「薬をシチコリンに変えてください」と続けた。

シチコリン?

それを聞いて、医療助手2は急いで薬を探し始め、顔を青ざめさせながら言った。「小、小林さん、最後のシチコリンを使い切ってしまったばかりです!」