092:謎めいた小林さん_5

監視カメラは実際には壊れていなかった。

しかし、誰が監視カメラを確認しに来ても、昨夜の映像は壊れていたと言うように指示を受けたばかりだった。

志村文礼は再び検査科を訪れた。

マスクを着用し、入り口に立って、ドアをノックした。

「どうぞ。」

志村文礼は足を踏み入れた。

検査科の医師は彼を見て、「志村先生。」

志村文礼は頷いて、「あの透明な寄生虫を見に来ました。」

「こちらへどうぞ。」

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小林綾乃が家に帰ったのは十時過ぎだった。

簡単に身支度を整え、インスタントラーメンを作って食べ、学校へ行く準備をした。

渡辺麗希に午前中だけ休みの連絡を頼んでいた。

午後は授業に出なければならない。

ラーメンを食べ終わったところで、小林桂代から電話がかかってきた。「綾乃。」

「お母さん。」

小林綾乃の声を聞いて、小林桂代は安心したように笑って言った:「もう学校に着いた?」

昨夜手術室に入る前、小林綾乃は小林桂代に電話をかけ、渡辺麗希の両親が出張で不在で、渡辺麗希が一人で寝るのを怖がっているので、渡辺家に泊まりに行くと伝えていた。

小林桂代を安心させるため、小林綾乃は渡辺麗希にも電話をかけさせていた。

小林綾乃は答えた:「麗希と午前中は学校を休んで、今ご飯を食べ終わったところ。これから行くところ。」

「通学路は気をつけてね。」小林桂代は念を押した。

「はい。」

小林桂代は続けて:「夜何が食べたい?帰ったら作るわ。」

小林桂代の声は普段と変わらず、小林桂美の件から立ち直ったようだった。

「エビのピリ辛煮が食べたい。」小林綾乃は真剣に考えて答えた。

「いいわよ。」

電話を切り、小林綾乃はカバンを背負って学校へ向かった。

到着したのはちょうど昼休みの時間だった。

渡辺麗希が小林綾乃の机の前に来て、「綾乃、来たんだね。」

「うん。」小林綾乃は軽く頷き、思わずあくびをした。

昨夜一睡もしていないので、今眠くなってきていた。

その様子を見て、渡辺麗希は興味深そうに、「綾乃、昨夜何してたの?」

「大きな手術をしてきたの。一晩中寝てないの。」小林綾乃は机に伏せて、だるそうな調子で小さな声で答えた。

これを聞いて、渡辺麗希は目を丸くした。

隣席の植田雅静も大きな衝撃を受けた様子だった。