監視カメラは実際には壊れていなかった。
しかし、誰が監視カメラを確認しに来ても、昨夜の映像は壊れていたと言うように指示を受けたばかりだった。
志村文礼は再び検査科を訪れた。
マスクを着用し、入り口に立って、ドアをノックした。
「どうぞ。」
志村文礼は足を踏み入れた。
検査科の医師は彼を見て、「志村先生。」
志村文礼は頷いて、「あの透明な寄生虫を見に来ました。」
「こちらへどうぞ。」
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小林綾乃が家に帰ったのは十時過ぎだった。
簡単に身支度を整え、インスタントラーメンを作って食べ、学校へ行く準備をした。
渡辺麗希に午前中だけ休みの連絡を頼んでいた。
午後は授業に出なければならない。
ラーメンを食べ終わったところで、小林桂代から電話がかかってきた。「綾乃。」
「お母さん。」
小林綾乃の声を聞いて、小林桂代は安心したように笑って言った:「もう学校に着いた?」
昨夜手術室に入る前、小林綾乃は小林桂代に電話をかけ、渡辺麗希の両親が出張で不在で、渡辺麗希が一人で寝るのを怖がっているので、渡辺家に泊まりに行くと伝えていた。
小林桂代を安心させるため、小林綾乃は渡辺麗希にも電話をかけさせていた。
小林綾乃は答えた:「麗希と午前中は学校を休んで、今ご飯を食べ終わったところ。これから行くところ。」
「通学路は気をつけてね。」小林桂代は念を押した。
「はい。」
小林桂代は続けて:「夜何が食べたい?帰ったら作るわ。」
小林桂代の声は普段と変わらず、小林桂美の件から立ち直ったようだった。
「エビのピリ辛煮が食べたい。」小林綾乃は真剣に考えて答えた。
「いいわよ。」
電話を切り、小林綾乃はカバンを背負って学校へ向かった。
到着したのはちょうど昼休みの時間だった。
渡辺麗希が小林綾乃の机の前に来て、「綾乃、来たんだね。」
「うん。」小林綾乃は軽く頷き、思わずあくびをした。
昨夜一睡もしていないので、今眠くなってきていた。
その様子を見て、渡辺麗希は興味深そうに、「綾乃、昨夜何してたの?」
「大きな手術をしてきたの。一晩中寝てないの。」小林綾乃は机に伏せて、だるそうな調子で小さな声で答えた。
これを聞いて、渡辺麗希は目を丸くした。
隣席の植田雅静も大きな衝撃を受けた様子だった。