山下おばあさんは少し躊躇して、「でも、手ぶらであなたの家に行くのは失礼じゃないかしら?」
今は破産したおばあさんという設定だけど、果物くらいは買っていけるはずだ。
手ぶらで行くのは、やはり少し失礼な気がする。
そう言って、山下おばあさんはさらに続けた。「それに、突然一緒に帰って食事をするなんて、お母さんに迷惑をかけないかしら?」
「大丈夫ですよ」小林綾乃は山下おばあさんの手を取り、断る余地を与えない様子で言った。「私と母も食事をするんですから、お箸が一膳増えるだけのことです」
それを聞いて、山下おばあさんは笑顔で答えた。「そうね!今度は私が廃品を売ったら、お二人を食事に招待するわ」
「はい」小林綾乃は軽く頷いた。
二人は一緒に階段を上がった。
小林綾乃は鍵を持っていたので、直接ドアを開けた。